コラム

平成をドラマで振り返る― ドラマ大豊作の年、男たちが怪演を見せた「平成25年」

  • twitterTwitter
    でシェア
  • twitterFacebook
    でシェア
  • LINEで送るLINE
    でシェア

平成をドラマで振り返る― ドラマ大豊作の年、男たちが怪演を見せた「平成25年」

平成25 (2013) 年は、ドラマが大豊作の1年であった。

瑛太と尾野真千子が壮絶な夫婦バトルを繰り広げる「最高の離婚」(フジテレビ)、女子高生が海女になったりアイドルになったり予測不可能な展開を見せた異色のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」、堺雅人が戦う銀行マンを演じた「半沢直樹」(TBS)、人気作の続編では堺の「リーガルハイ」、福山雅治の「ガリレオ」(ともにフジテレビ)、沢村一樹が不思議な魅力の医師を演じた「DOCTORS2~最強の名医」、米倉涼子がフリーランスの医師として大病院でわが道を貫く「ドクターX~外科医・大門未知子~」(ともにテレビ朝日)があった。渋めの深夜枠では、映画の続編として便利屋コンビのほろ苦い仕事の結末を描く「まほろ駅前番外地」、「孤独のグルメ」(ともにテレビ東京)もseason3となり、いい味を出している。

作品の中で目立ったのは、「パロディー精神」と「決めゼリフ」、そして「男たちの怪演」だ。

「パロディー」といえば、まず「あまちゃん」だ。主人公の天野アキ(能年玲奈、現在ののん)の母・春子(小泉今日子)が、若い頃に出場したアイドル発掘番組「君でもスターだよ!」は、実在した「君こそスターだよ!」(フジテレビ)を思わせるし、アキが岩手の地元番組で注目される過程やちょい役で出る2時間ドラマ、相手役のカッコつけ俳優・前髪クネ男(勝地涼)、所属する女の子アイドルグループ、彼女らを率いるやり手プロデューサー・荒巻太一(古田新太)などなど、「ああ、あれあれ」と思える要素が満載で目が離せなかった。

また、「リーガルハイ」も里見浩太朗がレギュラーキャストであることから、野村将希や大和田伸也など「水戸黄門」(TBS)の出演者が、しばしばゲストになって時代劇パロディーがあったり、同じフジテレビの名作「北の国から」も取り入れられることに。ドラマ好き視聴者の心をくすぐり続けた。

決めゼリフもインパクト抜群だった。

自分や仲間、大切な取引先を陥れようとする相手に対して、堺雅人演じる半沢直樹が言い放つ、「やられたらやり返す。倍返しだ!」、驚いた時にアキや東北の地元の人がつぶやく「じぇじぇじぇ」、さらに誰にも媚びることなく、プロとして仕事に徹する米倉涼子扮する大門未知子がどんな難手術に対してもきっぱり言い切る「私、失敗しないので」。短い言葉の中に人物のキャラを表現し、聞いて気持ちいい。見事な決めゼリフである。

そしてドラマを盛り上げたのが「男たちの怪演」。その筆頭は、やはり堺雅人である。

「金さえ払えば絶対裁判に勝つ。弁護料は最低でも5000万円」などと言い放ち、パートナー弁護士だった黛真知子(新垣結衣)のことを、「ガニ股」「幼稚園児」と罵倒してきた毒舌弁護士・古美門研介(堺)は8:2分けのぺったりしたヘアスタイルで目立ちまくり、しゃべりまくる。

裁判で連勝し鼻高々の古美門。そんな彼に痛い一敗をくらわせたのがシベリアの死神(命名は古美門)こと検事の醍醐実(松平健)だ。日当たりが悪く、入るとヒューッとドライアイスの白煙(?)が漂うほど冷え切った部屋で仕事をする醍醐は、長い前髪で顔半分がまったく見えない陰気男。ノースリーブを着るような陽気なのに、黒ずくめのロングコートで裁判に登場する。しかし、古美門が得意の毒舌で警察の捜査を批判すると、でかい黒雲のような醍醐は前髪の隙間から目を光らせ、「聞き捨てなりませんな。無礼千万!」ジャジャジャーンと「暴れん坊将軍」(テレビ朝日)の効果音とともに怒りを露わにするのだ。

■「あまちゃん」「半沢直樹」…ドラマ熱の高かった1年

一方、「DOCTORS2~」の森山卓先生(高嶋政伸)もなかなかだ。彼は病院長・堂上たまき(野際陽子)の甥で「卓ちゃん!」とかわいがられるお坊ちゃま。とにかく自信過剰で、主人公の外科医・相良浩介(沢村一樹)が大嫌い。「俺が院長になったら、お前はクビだ!あひゃひゃひゃ」といばるものの、相良にしてやられるのだ。相良に操られ、患者のため600CCも献血させられてフラフラになった卓ちゃんは、くやしさのあまり、相良の顔面に「ハァ~」と臭い息を振りまき、「ふん! 貧血だからレバニラ炒めを食べてきた」って。やることがちっちゃくて笑える。

もう一つの堺の代表作となった「半沢直樹」では、「君はもう終わりだ」と部下に責任を押し付ける支店長・浅野匡(石丸幹二)。東田満社長(宇梶剛士)の不正追及に半沢の存在が邪魔だと、「おだまりなさい! 私たちの仕事は国民の血税を守る誇り高いもの。所詮あなたたちは、汚い金貸しじゃないの」とオネエ言葉で怒る国税局統括官の黒崎駿一(片岡愛之助)。さらに自分の野望を達成しようと白い歯をむき出しにする上司の大和田暁(香川照之)も登場。半沢は強敵の圧力に屈せず、仲間と共に戦いを挑む。敵方の怪演と逆転劇の爽快感。直球勝負ドラマ「半沢直樹」は最高視聴率42.2%(ビデオリサーチ調べ)記録している。

東日本大震災から2年の時を経て、ドラマにもその記憶が残ることになった年でもある。NHK大河ドラマ「八重の桜」では、綾瀬はるかが会津を守るため、自ら銃をとって戦い、「あまちゃん」では震災でトンネルに取り残された第三セクターの列車が、わずか5日後にガタゴトと動き出した。くじけず自分を信じる主人公、暮らしの中の笑いと涙、震災に向き合ったドラマクリエーターたちの願いと希望がにじみ出たシーンを視聴者も共有した。ドラマ熱の高い1年であった。

文/ペリー荻野

関連記事