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BBC、ニュース部門で大幅なコスト削減断行へ 国際放送BBCワールドにも影響必至

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BBC、ニュース部門で大幅なコスト削減断行へ 国際放送BBCワールドにも影響必至

 イギリスの公共放送BBCと聞いて、皆さん何を思い浮かべますか?エリザベス女王の戴冠式の実況中継、最近では昨年NHKで放送された人気ドラマ「SHERLOCKシャーロック」を制作した放送局等々でしょうか。

BBCは世界の放送局の中で最も古い放送局の一つと言っていいでしょう。そのBBCがこのほど、ニュース部門の大規模なコスト削減を断行することを明らかにしました。ニュース部門のジェームズ・ハーディング報道部長によりますと、その規模は2020年までの4年間で8000万ポンド(128億円)。詳細は現在検討中ということですが、ニュースチャンネルやローカルニュース部門などが対象になるようです。ニュースチャンネルは国際放送BBCワールドを中心に毎年、約6300万ポンド(約100億円)のコストがかかっており、その大半がニュース素材や情報収集コストだということです。

 BBCは世界の放送局の中でも、早くから国際展開をはかり今では欧米は勿論、アジア・中東・アフリカ・南アメリカの80以上の主要都市に支局を持つ世界最大の放送局です。そして、ニュースの信頼性でも世界的評価を得ており、アメリカのCNNに並び評される世界の放送局と言えるでしょう。私もかつて、アフガニスタンのカブール、カザフスタンのアルマトイ、キューバのハバナなど辺鄙(へんぴ)な地域を取材した時は、BBCの短波ラジオを聞いてその地域の情報を手に入れていました。BBCは常駐スタッフが各所にいて、その地域の情報を専門に収集しているため精度が違うのです。

 そんなBBCが今何故、ニュース部門の経費削減に踏み切るのでしょう?それはイギリス独特の放送制度を知る必要があります。BBCは、1922年に創設されました。その後政府の「放送は公共事業」との考えから、27年に“公共放送”と認定され、国王の特許状に基づく放送局とされたのです。その際財源は、国民から徴収するLicense Fee=受信許可料・通称受信料で、そのほとんどが賄われてきました。しかし今世紀に入り、デジタル化投資が増え続け、イギリス政府からかなりの額の補助金がBBCに提供されるようになりました。

その特許状の更新が今年です。特許状は10年ごとに更新されるため、今新たな特許状発行に向けて準備が進められているのです。しかし、現在の保守党政権は、財政が厳しい中で来年以降の補助金を大幅に削減することを表明しています。このためBBCは放送全般の事業の見直し、中でも出費がかさむニュース部門の合理化を迫られていたのです。

 BBCは2005年にも、約2000人の削減などニュース部門の大リストラを断行し、代わりにネット人材を大量採用してデジタル部門を拡充しました。今回のリストラは、その時に次ぐ大規模なものです。

 ISISによる世界的テロの拡散、緊迫化するシリア情勢、北朝鮮の核開発問題等世界情勢が混沌とする中、信頼のおけるニュースへの需要が高まっています。ニュース専門チャンネルは、BBCのほかアメリカのCNN、中東カタールのアルジャジーラ、フランスのFrance24、最近では中国のCCTVやロシアのRT、日本のNHKワールドTVが登場し、国際ニュース報道の闘いを続けています。しかし、ニュースには多額のお金がかかる上、世界的な景気低迷で視聴者も減り続けており、各チャンネルとも運営が厳しくなっています。アルジャジーラは、進出したアメリカからわずか3年で撤退することを決めました。原油安で、後ろ盾だったカタール政府からの補助が大幅に減ったことが原因と言われています。

 翻(ひるがえ)って日本はどうでしょうか?BBCと同じ公共放送のNHKは、番組が好調なことから受信料収入が増えています。このためNHKワールドTVの関連予算も、今年は22億円ほど増えています。対する民放キー局は、CM収入が好調にもかかわらずニュース予算を増やしたという話は聞きません。とりわけ海外ニュースは、縮小に次ぐ縮小です。海外支局の削減がその象徴で、パリやウィーンなどの支局を閉鎖したキー局も出始めています。昨年11月パリで起きた連続爆破テロ事件の際、あまりにもニュースが少なく日本の放送が批判を浴びましたが、パリに支局がなかったことも影響しているのです。

 BBCは昨秋、BBCワールドの日本語版サイトを開設してスタッフも増やし日本事業を拡大したばかりでした。BBC本体の今回のニュース部門縮小措置は、日本事業の今後にも暗い影を落としています。BBCの動きは、世界の他の放送局にも波及しかねず、今後のBBCの動向を注意深く見守る必要があるといえるでしょう。

(メディアジャーナリスト 大原通郎)

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