コラム

華やかな舞台だけではない“もう一つの”箱根駅伝

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華やかな舞台だけではない“もう一つの”箱根駅伝

(C)三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会

お正月の風物詩、箱根駅伝を題材にした小説『風が強く吹いている』。無名大学の寄せ集め集団が、まさかの箱根駅伝出場を目指すという感動物語は、駅伝シーズンに必ず話題となる名作です。

過去には舞台や映画化もされていますが、2018年10月からは、同名アニメ「風が強く吹いている」(日本テレビ系)としても放送中。原作発表から12年、満を持しての、待望のアニメ化ともいえそうです。


■熾烈で過酷な箱根駅伝の“もう一つの戦い”

一人が約20kmの区間を走り、タスキを次の走者へ。往路と復路で全10区、計10人による走りが感動を呼ぶ箱根駅伝。1920年の第1回大会にまで遡る歴史と伝統は、2019年で第95回に。まさに、国内の駅伝競技を代表する大会なのです。

その箱根駅伝には、大会の華ともいえる優勝争いとは別に、「もうひとつの感動ストーリー」を生み出す“シード権争い”があります。

10位までに入れば、翌年の出場権を得られる“シード権”。11位以下の大学は、秋に行われる予選会で出場権を獲得しなければなりません。予選会は本大会以上に厳しい戦いともいわれるだけに、シード権確保に向けた熾烈な10位争いが、悲喜こもごもな物語を生むわけです。

部員数わずか10名の無名校・寛政大学も、そんなシード権争いを繰り広げる1校。複数の補欠選手をエントリーし、状況次第で選手を入れ替えることが当たり前な箱根駅伝にあって、出場資格ギリギリの10名で挑む大学など前代未聞……とは、あくまでフィクションのお話。

そう、その寛政大学こそ、「風が強く吹いている」の舞台となる大学なのです。陸上経験もほとんどない寄せ集め集団が箱根挑戦を掲げ、まずは予選会への出場を目指し、日々のトレーニングに励む。その紆余曲折の日々が、アニメでもじっくりと描かれていきます。


■箱根を目指し「走るなといわれても走ってやる」

寛政大学のメンバーで、まともに陸上経験がある部員は二人だけ。エリートランナーの座から、足の故障で挫折した主将・ハイジ。不祥事から陸上の道を閉ざされかけていた天才走者・カケル。この二人が、自身の心と体の問題を克服しつつ、素人集団を引っ張っていきます。

他のメンバーもまた、一癖も二癖もある強者揃い。運動とは無縁の暮らしをしてきた漫画オタクの王子。若干の陸上経験はあるものの、今では超がつくヘビースモーカーのニコチャン。司法試験に現役一発合格した秀才ながら、毎晩のようにクラブに通っているユキなど、凸凹にもほどがある構成です。

彼らが暮らす格安学生寮・竹青荘こそ、実は陸上部錬成所であり、知らないうちにハイジの壮大な計画に“巻き込まれてしまった”メンバーたち。待ち受ける試練の数々を、凸凹陸上部は乗り越えていけるのか!?

「絶対に無理」「あり得ない」「箱根をナメるな」。エースのカケルまでもが思わず声を荒げてしまう、ベクトルが違いすぎる寄せ集め集団。気持ちも実力もバラバラだった彼らは、やがて走ることで何かを感じ、心の重荷を振り払い、ハイジとともに結束していきます。

アニメ版「風が強く吹いている」では、そうした原作の世界観に、現代的な描写やオリジナル構成、新ストーリーを加味。より濃厚な人間ドラマへと昇華させています。

「走りたい。もっともっと、走るなっていわれても走ってやる。自分の気持ちに従うことを、うっかり忘れていたかもしれない」

第11話でハイジが語った言葉そのままに、メンバーそれぞれの葛藤と戦いを、思い入れたっぷりに見つめていくことができるでしょう。


■予選会の狭き門を寛政大学は突破できるのか!?

「風が強く吹いている」の前半〜中盤では、予選会から本大会出場を目指す過酷さがリアルに描かれます。

そもそも、箱根駅伝の予選会には厳しい出場制限があることはご存じでしょうか。

予選会出場のためには、シーズン中の記録会で、一定タイム以上の公認記録をマークしなければなりません。その有資格者が10人揃わなければ、部として予選会に臨むことはできないわけです。

第95回大会の予選会には、関東にある300近い大学のうち、39校しか出場できませんでした。うち2校は、出場できた選手は10名ギリギリ。まさに狭き門なのです。

ようやく予選会に出場できても、過酷なタイムトライアルを勝ち抜き、本大会に進める大学は10校のみ。シード権を持つ10校と合わせて、箱根を走ることができる20校のタスキに、どれほどの汗と苦労、青春の葛藤が染み込んでいるのか……。

*注:箱根駅伝・第95回(2019年)は記念大会のため、予選会出場枠が1校増に。予選会枠11校、関東インカレ成績枠1校を含む22校+関東学生連合の計23チームが出場。


アニメ「風が強く吹いている」には、そうした“表に出てこない”物語が、宝石のように散りばめられています。皆さんも同作を通して、箱根駅伝を見る目が変わりそうな宝石に出逢ってみませんか?

(文/藤井淳@アドバンスワークス)

放送情報は公式HPより

(C)三浦しをん・新潮社/寛政大学陸上競技部後援会

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