コラム

「じれったい恋愛模様がたまらない」! 「テラスハウス」アメリカでカルト的人気

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「じれったい恋愛模様がたまらない」! 「テラスハウス」アメリカでカルト的人気

「NY Times」の記事より

【町田雪のLA発★ドラマ通信 ♯1】
ロサンゼルス在住のライターが、人気ドラマやその舞台裏など、LAならではの情報をお届けします。

ある日、近所のドッグランに犬の散歩に行ったときのこと。突然、60代前半ぐらいの白人女性に「あなた、日本人?」と話しかけられた。「はい」と答えると、パッと顔が明るくなり、「オーマイガッド! 私、テラスハウスにハマってるのよ!」という。「……テラスハウスって、あの日本発の? シェアハウスの男女の恋愛観察の?」。「そう、もう史上最高の番組だわ。オーマイガッド!」。胸に手をあてて、天を仰ぐ彼女。そこから30分、まだ新エピソードを観ていなかったために、登場人物の関係性についていくことができない私を置いてけぼりに、「テラスハウス」論をひたすら語ってくれた。「恋愛の仕方や速度はアメリカとは違うけれど、くっつきそうでくっつかない、じれったい恋愛模様がたまらない」のだそうだ。

2012年からフジテレビ系列で始まった恋愛観察リアリティ番組「テラスハウス」は、2015年よりNetflixでの配信をスタート。米国においても、徐々にファンを増やし、数々の米主要メディアが記事にしている。ドッグラン事件(とあえて言わせていただく)の前から、この現象に薄々気づいてはいたが、いざ調べてみると、「ニューヨーク・タイムズ」紙から「タイムズ」誌、ファッション誌の「GQ」、フード情報サイト「Eater」にいたるまで、バラエティ豊かなメディアが「テラスハウス」への愛、それも熱愛&純愛を綴っているのだ。

Netflixは視聴者数を公表しないため、その浸透度を確実に把握することはできないが、ニューヨーク・タイムズによれば「米国でカルト的ヒット&国際的現象」になっているとのこと。実際、米在住のジャーナリスト仲間と話をしたところ、東海岸でも、10代の女子学生や、30代の男性ミュージシャンが観ているそうだ。

国境を越えるのが難しいとされるイースト・ミーツ・ウエストのコンテンツが、エリアも年代も性別も超えて、支持されているという快挙。しかも、ユニバーサルなドラマというよりは、文化や環境が大きく影響しそうな恋愛リアリティなのに。一体なぜなのか? メディアやSNSの反応から、米国における「テラスハウス」人気を解析してみたい。

■「タイムズ」紙「きわめて地味なドラマ」と絶賛!?

まず、同シリーズ普及において、もっとも熱狂的なメディアがニューヨーク・タイムズだ。昨年5月には同紙記者が「『テラスハウス』推薦状」というタイトルで、「端的に言うと、とても退屈な番組だ。催眠術かと思うぐらい退屈。でも2~3話まで観たあたりから、何かが変わる。この番組の論法にハマるのだ。衝撃的なひねりやサプライズ、ドラマなどに期待をしなくなり、『テラスハウス』の時間の流れを生きるようになる。結果、1カ月で46話を観てしまった」と告白。

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「GQ」の記事より

この「退屈に感じるけれど、実際の恋愛ってそういうものじゃないか?」という論調は、ほかのメディアやSNSでも主流を占める。GQのライターは、同シリーズを「リアリティ番組嫌いの人のためのリアリティ番組」と位置づけ、「誰かが誰かに微笑みかけるだけで気が狂いそうになり、誰かが誰かに優しくないだけで激しく落ち込む。ここで描かれる人間関係は、現実に近いものなのだ」と、“「テラスハウス」時間”の魔法に同意する。

そう。米国のMTVや主要ネットワーク局で放送されるシェアハウスの恋愛観察番組や、デート&マッチング・リアリティ番組は、現実離れしたセレブ級の舞台を背景に、どう考えても一般人とは思えないキャストが、あまりにも早く“アクション”を起こすものが多いのだ。

たとえ仕込みだと視聴者に思われようとも、とことん派手にエンタテインメント性を重視するスタンスは、いかにもアメリカ的。どうも敬遠しがちになってしまうのは自分が日本人だからだと思っていたが、どうやら、「ドラマチックすぎるアメリカ的リアリティ番組」への疲弊感は、アメリカ人視聴者にも及んでいたようだ。

そんな彼らの胸の内を代弁したのが、「タイムズ」紙。先日発表した「2018年のベスト・テレビ番組ランキング」の6位に、「テラスハウス」の軽井沢編「テラスハウス オープニング・ニュー・ドアーズ」を選出し、「豪華な家に、優しいシングルの若者たちが出会いを求めて集まった、きわめて地味なドラマ」と描写。「胸が痛むニュースに溢れた今年にあって、彼らの物語は一筋の安らぎをくれる」と評価した。この6位という順位、ジュリア・ロバーツ主演のアマゾン配信作品「ホームカミング」など注目のシリーズより上なのだから、大したものである。

■ニューヨーク・タイムズが選んだ栄えあるベスト・スタジオキャストは?

今年10月半ばには、ふたたび、ニューヨーク・タイムズに登場。今度は自他ともに認める「テラスハウス」オタクの3人の記者(男性2人と女性1人)が、「最高&最低キャスト」「一番物議をかもした出来事」「ベスト・カップル」「ベスト・スタジオキャスト」「同シリーズの一番の魅力&欠点」といったお題を掲げ、議論を繰り広げた。

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NETFLIX ORIGINAL「TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY」https://www.netflix.com/より

意見が分かれたお題もあるなか、ベスト・スタジオキャストは南海キャンディーズの山里亮太で全員一致。女性記者が「日本でしか観られない裏YouTubeチャンネル(山チャンネル)を米国でも観られるように、Netfilixに直談判中!」と明かせば、男性記者は「僕の天職は『テラスハウス』のスタジオキャストだと思う」と山里への嫉妬を覗かせる。そんな山里の魅力は「面白さと意地悪さの両刀アプローチ」「組み合わせはコンサバなのに、細部がエキセントリックな服装」ということで、コンテンツの中身から、その衣装にまでしっかり目が行っている。

同座談会で、シリーズの一番の魅力として挙げられたのが、「男性の涙」。女性記者によれば、「アメリカ的な男らしさのイメージにとらわれているなかで、男性キャストが泣いているシーンは、とてもレアで魅力的なオアシスのよう」。「アメリカの婚活リアリティ番組のように、仕込まれた婚約パーティで巧妙な作り涙を流すのとは違い、顔を赤くして、しゃくりあげ、目からこぼれ落ちる本気の涙がたまらない」のだという。この「男性の涙」は、別メディアの記者たちも同シリーズの魅力として挙げている。

シリーズの欠点としては、米ABCの婚活リアリティ番組「バチェラー」を引き合いに意見が分かれた。

男性記者は、「テラスハウス」の魅力がピュアさと新鮮さであることを認めつつも、「さすがに、じらしすぎで、制作側の企みのように感じてしまう」と主張。キャストが酔いつぶれたり、キスをしたりといった“アクション”がある絵も、ときには見せてほしいという。

一方、女性記者は「シーズンが進むにつれて、ドラマチックなできごとが増え、カップル誕生を促す流れが「バチェラー」っぽくてつまらない。ドラマが増えるほど、感情が乾いていく」とチクリ。「バチェラー」要素を入れてほしい気持ちと、「バチェラー」に寄らないでほしい気持ち。制作陣泣かせの複雑なファン心である。

■「テラスハウス」で“ご馳走”ではない日本の食が人気に!

このほか、エンタテインメント・ニュースサイト「Vulture」は、「『テラスハウス』キャスト・ランキング」と題し、実に44人のキャストを理由付きでランク付け。1位には、島袋聖南を選出している。さらに、フード&レストラン系情報サイト「Eater」は、同シリーズにおける料理や食事シーンの重要性にフォーカス。「『テラスハウス』にとって、食べ物は様々なレベルで重要な要素となっている。ホームクッキング、外食、よだれが出そうな肉鍋……。日本食と言えば、寿司かラーメンにしかなじみのない視聴者は、お好み焼きやおにぎり弁当など、日本やハワイの日常的な料理を目にすることができるはずだ」と綴っている。

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フード&レストラン系情報サイト「Eater」の記事より

このように、世界に誇る料理文化を持つ日本食の描写、米テレビではあまり見られない種類の男性の涙、スタジオキャストの傍観コメントなど、「テラスハウス」がアメリカで人気を博している理由はいろいろある。そして結局のところ、アメリカ人の恋愛だって、派手でドラマチックでアクション満載とは限らないのだ。

アメリカ人といっても、いろいろな人種・文化・恋愛の仕方があるため、ひとくくりにはできないが、実は、エンタメ重視のアメリカ的恋愛リアリティ番組より、ゆっくりとしたペースで展開する「テラスハウス」のほうが、一般人の恋愛観に近いのだろう。SNSでは「アメリカ版テラスハウス」を望む投稿も飛び交っているが、それが実現する日もそう遠くないのかもしれない。

文=町田雪/Avanti Press

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