コラム

『侠飯』の料理が『グ・ラ・メ!』より美味しそうに感じる3つの理由

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テレビ東京系列で深夜0時12分から放送の『侠飯~おとこめし~』。
ヤクザの抗争に巻き込まれた大学生が、自宅アパートにヤクザの組長(主演:生瀬勝久)を匿うことから物語は始まる。ヤクザならではのトラブルを中心にストーリーは進むが、組長が“休憩中”に振舞う料理がとても絶品!という、まさに異“食”のグルメドラマだ。

2日(金)の第7話は、命懸けで掴んだネタについてヤクザから追われる男とその彼女の話。
生瀬勝久の属する組が、その男を保護するために奔走するというストーリーが本線で、基本的にシリアスな話なのだが、「飯にするか」と一息いれるタイミングで振舞われた「生姜焼き」があまりに美味しそうで心を奪われた。深夜0時すぎの小腹が空く時間帯、このような“夜食テロ”が実行されると被害は甚大だ。

今クールは、金曜に食に関するドラマが3つ並んでいる。
20:00~テレビ東京『ヤッさん 築地発!美味しい事件簿(主演:伊原剛志)』(8/26放送終了)
23:15~テレビ朝日『グ・ラ・メ!~総理の料理番~(主演:剛力彩芽)』
24:12~テレビ東京『侠飯~おとこめし~』
いずれのドラマも劇中に料理が登場するが、『侠飯』が圧倒的に美味しそうに感じる。特に『グ・ラ・メ!』と『侠飯』は、料理への焦点の当て方が似ているが、美味しそうに感じる度合いが異なるのはなぜだろうか。

味覚の学問の世界では、美味しさを感じるには以下の3条件があると言われている。
1.生理的な欲求が満たされる美味しさ
人間は本能的に、お腹が空いたときや喉が渇いたときなど、生きるために必要なものは美味しく感じるようにできている。皆さんも、部活で疲れた後に飲んだ“水道水”が美味しく感じた経験があるだろう。

2.食文化に合致した美味しさ
国や食経験の違いによって美味しいと感じる味は異なる。海外で食べる料理が口に合わないと感じるのはこれが理由だ。

3.情報がリードする美味しさ
行列のできるラーメン屋は美味しそうだったり、テレビで取り上げられたレストランは美味しく感じる。味ではなく情報が美味しさを変えているのだ。

上記3条件を踏まえ、『侠飯』と『グ・ラ・メ!』を比較してみよう。

1つ目の条件は、生きるために必要なものは美味しく感じるという話。
『グ・ラ・メ!』は官邸での料理がテーマ。総理の“政治生命”に関わる描写は多いものの、『侠飯』のヤクザは文字通り“命”をかけて動いている。死と向かい合わせの状況で食べる料理だからこそ、“生きる”ため、という本能的な感覚が引き出され、料理が美味しそうに感じられるという側面があるのだろう。

2つ目の条件は食文化。
『グ・ラ・メ!』はVIPに対してフランス料理等の高級なものが振舞われることが多く、庶民には味がピンとこない。対して『侠飯』はひとり暮らしの男性の冷蔵庫にあるものを食材とした料理。誰もが食べたことがある料理のため、味が容易に想像でき、すぐにでも食べたくなってしまう。事実、Twitterでは「侠飯でやってた塩辛カレーリゾット作ってみた」などのコメントとともにアップされた写真が次々に見つかる。

3つ目の条件は情報。
両ドラマとも料理に焦点を当て、情報量が豊富な点は共通しているが、『グ・ラ・メ!』では味そのものよりもメニューを選んだ動機やメッセージ性に重きを置いている。一方『侠飯』では料理を作る段階から「豚肉にはちみつをすりこむとよい」などの隠し味が丁寧に描かれ、味自体へのこだわりが強く感じられる。食べた後の感想もプロのグルメレポーター以上に言葉選びが秀逸で、味だけでなく匂いや食感までもが想像できてしまうほどだ。

このように美味しさの“3拍子”が揃った『侠飯』。見るとお腹が空くのは当然と言える。
筆者は“テロ”の攻撃をモロに受け、視聴後、カップラーメンに手を伸ばしてしまった。視聴後の行動にまで影響を与えるこのドラマ。ダイエット中の方は覚悟してご覧いただきたい。


(一般社団法人日本味覚協会 代表 水野考貴)
著者ブログ:『『味覚ステーション~世界一面白く食品・栄養・味覚を学べるサイト』

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