コラム

ゴリ押しとは言わせない!メッセージが光る剛力彩芽主演『グ・ラ・メ!』

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テレビ朝日系列で金曜23時15分から放送の『グ・ラ・メ!~総理の料理番~』。
剛力彩芽演じる市木くるみが、官邸料理人に抜擢されるところから物語は始まる。官邸料理人は、外交問題や政治問題をはらんだ国賓・公賓といった要人等、様々な人々が招かれる首相官邸で料理を提供する、重要な役目だ。

主演の剛力彩芽は、一部ネットで“ゴリ押し”などと批判されているが、このドラマは好調と言える。
初回視聴率7.2%は、深夜の時間帯であるにもかかわらず、金曜ドラマの中で一番高かった。(テレ東20時『ヤッサン』4.7%、NHK22時『水族館ガール』6.0%、TBS22時『神の舌を持つ男』6.4%、テレ東24時12分『侠飯~おとこめし~』2.0%)
第2話以降はやや下降しているものの(第2話6.7%、第3話4.1%、第4話4.3%、第5話5.0%)、全体的に視聴率が低調な今コンクールのドラマの中では健闘しているといえよう。

主人公の市木くるみは、「料理にメッセージを込める」ことを得意としている。
19日放送の第5話では、米大統領首席補佐官が極秘で来日し、総理と会食を行うというストーリー。大統領のやり方に文句を言わず従うようにと促す米首席補佐官に対し、市木くるみは“多国籍ピザ”を提供。ハワイ、インドネシア、シンガポール、日本の名産を、アメリカのソウルフードであるピザの上に乗せることで、「各国が主張しあっても、地球という一枚の生地の上では協調できる」というメッセージを込めた。

対して、ライバルである「官邸大食堂総料理長」の清沢晴樹(高橋一生)は、ジゴ・ダニョー・ロティ(仔羊もも肉のロースト)を提供。
伝統あるフランス料理で、明日も変わらずに食べたいと思える味、これがまさにプロの料理だと、米首席補佐官はこちらをより高く評価した。
この伝統のフランス料理のように、「あって当然のものが必ずある」ということは幸せであり、国民の平和がまさにそれにあたるのではないか、と言い米首席補佐官は去っていった。

「あって当然のものが必ずある」ことの幸せを感じることは難しい。
食の世界で、「あって当然のもの」の最たるものは、家庭料理ではないだろうか。
毎日慣れ親しんだ味。毎日食べるからこそ、有り難みを感じることは少なくなってしまう。本当はとても美味しく感じているはずなのに、だ。

味覚の観点から言っても、慣れる、ということは美味しさにつながっている。
例えば一般的に高級と言われるキャビアやフォアグラは、初めて食べたときにはあまり美味しく感じない方が多いだろう。人間の舌は、初めての味に違和感を覚えるようにできているのだ。逆に、食べ慣れた味は美味しく感じるようにできているが、驚きや感激は生まれないため、表現することが難しいようだ。

夏休み、親元を離れて暮らしている方は、お盆に里帰りをした方が多いのではないだろうか。
久しぶりに帰省すると、母が「何を食べたい?」と聞いてくる。私は、「お寿司や焼肉でも食べに行きたいな」と思ったのだが、同じタイミングで帰ってきていた兄は、「そうめん」と答えた。
そうめんなんて昔イヤになるほど食べさせられたものだ。食べたい、と思うものではない。
しかし、久しぶりに食べたそうめんはとても美味しかった。「あって当然のもの」の有り難みを、兄はこの時点で理解していたのだろう。私はこのドラマを見て、やっと理解することができた。

(一般社団法人日本味覚協会 代表 水野考貴)
著者ブログ:『味覚ステーション~世界一面白く食品・栄養・味覚を学べるサイト』

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